その行基が、養老七年(西暦723年)に、駿河の法明寺(静岡市葵区足久保奥組の山の上にある曹洞宗の古いお寺)にあった楠の大木を切って観音菩薩(千手千眼観世音菩薩)を彫り、七つの寺に安置した。それによって聖武天皇の病気が治癒した・・・という伝説がある。
楠の木は行基に切られたくて光っていたとか、切ったら血が流れたとか、いろんな話になっているが、常識的に考えれば、そういった奇跡というのは、誰かの思い込みだったり、誇張と脚色の発展形だったりするものだから、細かいことは気にしなくていいだろう。
行基があまりに偉大だったから、日本中に行基が開いたお寺だとか、作った橋だとかがいっぱいあるらしい。いっぱいあるから偉大だというよりも、偉大だからいっぱいあることになってしまったと考えた方がいいだろう。
そんなことはともかく、安倍七観音は今もなんとか現存している。現存している観音菩薩像が、本当に行基が彫ったものだという証拠はないし、科学的に検証するともっと新しかったなんてこともあるようだが、少なくとも千年とか、それ以上の長きにわたって、七つのお寺は信仰を集めてきた。もちろん、信仰とはいっても日本のことだから、狂信的になる人もいないし、信仰が強制されたこともない。あくまでも、どこまでも、駿河の国と同じようにのんびりしていて平和な信仰だ。
そんな平和で脳天気なパワースポットとして、安倍七観音も勘定に入れてみてはいかがだろう。